未曾有の脱獄事件。4度も脱獄した犯人の超人的な手口とは?吉村昭 破獄 レビュー [本 レビュー]
本日は吉村昭の「破獄」について紹介いたします。こちら私の中で非常に印象深い作品で、読後1年以上が経過する今でも、読後の衝撃が残っております。まずはどんな作品か、Amazonの商品詳細からの抜粋です(またも手抜き)
「昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和23年札幌刑務所脱獄。犯罪史上未曽有の4度の脱獄を実行した無
期刑囚佐久間清太郎。その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。読売文学賞受賞作。」
まさにプリズンブレイク。白鳥由栄をモデルにした作品で、ほぼノンフィクションです。それにしても4度も脱獄するとは天才です。脱獄はそれぞれ意表をつく
ものばかり。驚かされます。袋のネズミにされても華麗に逃走してしまうのです。あの網走刑務所もしっかり登場しております。網走刑務所と言えば観光地とし
て有名ですが、私も一度訪れたことがあり、読み進めるうえで場面を想像しやすかった。で、当時の北海道の寒さは今のそれを凌ぎ、暖房も粗末でしたから(刑
務所の場合)刑務所内で凍死することは当たり前。網走刑務所は食糧に恵まれていましたから飢え死にすることはなかったのですが、他の刑務所は飢え死にが頻
繁に起こっていたそうで。そんな過酷な状況下の描写が実に巧い。素っ気無く、淡々とした飾り気のない文体がこの上ないリアリティを醸し出します。
物語は戦前から戦後の時代背景とともに進みます。刑務所という特殊な舞台の中で繰り広げられる人間模様を描いた物語だと感じました。
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