感動の名作!三浦綾子の愛に満ちた生涯! [本 レビュー]
旭川の三浦綾子記念文学館へ行ったという記事を以前書いた。そこでも紹介した「道ありき」について軽く感想を述べたいと思う。
そもそも私がなぜ三浦綾子文学に出会うことができたのか。そこから説明したく思う。高校2年生のときだった。ある友人から「氷点」を勧められたのである。そのころは、読書経験も乏しく、本に関する知識もなかったため、この作品のことを全く知らなかった。新聞小説で1000万円当選したと言うことも、社会現象を引き起こしたと言うこともまったくさっぱり知らなかった。
だから、どんな内容の本なのかというのと、昔の本で難しくはないか?という不安があった。試しに1ページ、2ページ、3ページ・・・と読んでいくうちについには最後のページまで達していた。人間の罪深さ、生まれながらに背負う罪、そしてその醜さ等々があまりに重苦しく、あまりに寂しく描かれていた。読書経験の少ない私にとってこのことは、とんでもない衝撃だったのである。
これが私の三浦文学の出発点であり、それにハマらせた、直接的要因を為すものである。以来実に多くの三浦文学に親しみ、そのテーマの切実さを読み取ってきた。
その過程の中で出会った、 最も私に迫り、最も衝撃を受けたのが、前述の「道ありき」である。本書は作者の自伝小説なるもので、実体験を元に書かれている。青春編ということで、作者が小学校教師であった時分から、三浦光世と結婚するまでのお話である。
いよいよここからが本題。
私が幾度もTwitterで賞賛し、友人に勧め、本当に素晴らしい本だと思うのも、作者が真実を述べているからであろう。如何に本書の魅力をうまく伝えられるか、難しいところではあるが、ぜひ読んでいただきたい。
愛とは何か。生きるとは何か。信じるとは何か。作者はこの問を、感動とともに私たち読者に与える。そしてその問を自伝という形で解いていく。敗戦の衝撃、病に冒される身体、自分に起きたこととして考えれば、虚無になり、死にたくなるのも無理はない。私も同様に生きる希望を失うであろう。そして、自分には綾子を救う力がない、と自らの足を石で打って自責した前川氏。自分を犠牲にしてまで恋人を救いたいという程の愛は通常なかなか持てぬものである。かくもストイックで偽りのない真実なる愛があるとは…感動感激の連続であった。
今も昔も、(昔のことはよくわからないが)青春時代の恋愛というと、どこか遊びめいたところがあり、とりあえず付き合うといった、相手と自分の心を軽んじ、ただ寂しさを埋め合わせるための恋愛というのが実に多いように思える。そしてその恋愛の形態というのも、心を通じ合わせるというより、肉体と肉体の交わりだけで終わるということが多いのではないか。更には、相手の全てを受けいれられず、あの頃は良かったのに今は!といった風に幻滅したり、恋人が病に冒されたりすると、病気のお前なんぞ愛せるわけがない!と捨ててしまうことも多いのではないか。若い時代というのはかくてすぐに付き合いすぐに別れることの繰り返しで、美しさも無ければ真実もないし、愛も無論ないのだ。
なにも私はプラトニックラブ至上主義者ではないし、クリスチャンでもセバスチャンでもない。だが、あまりに恋愛というのが粗略になり、恋愛と言うに値しない状況に陥っている事例の多い現状において、前述の点すべては、改善されるべきであると思う。
青春時代の恋愛というのは(別に青春時代に限ったことではないが)実に問題点が多く、どうせすぐに別れるなら、最初から付き合うなという話。それなら友達の関係でいれば苦しむこともないし、執着することもないのだ。
以上の点すべてに該当しないのが綾子氏の恋愛である。道ありきではその真実なる愛が語られている。綾子氏は前川正という男性に愛され、虚無から救われた。死にたいという綾子氏に対して、前川氏は驚くほど愛に満ちた、さらには自己犠牲的な愛を示している。そのシーンはいくつかあったが、あの春光台の、石で叩くシーンは今も忘れられない。
「綾ちゃんは女でしょう。女である以上、生活の相手である男性というものを、ほんとうの意味で知らなくてはいけませんよ。男性をきれいなものに思い描いていて、その思い描いた幻と結婚したりするから、世には不幸な結婚も多いのですよ。」という前川氏の発言。なんて正直で、真実なる言葉であろうか。恋人の前では良いことばかりアピールして、なかなかこうしたことを言えるものではない。
「愛するとは 相手を自立させてあげること」 なるほど共感。
その後の前川氏の動向についてはココでは述べないが、綾子氏の心情だとか、前川氏の一つ一つの言葉はじっくり読むべきである。
その後、脊椎カリエスを発病した綾子氏は、14年間も、寝返りの許されないギプスベッドに臥ることになった。いつ治るかもわからない。それでいてなにもすることができない。死にたくなるのも当然である。私が同じ立場だったら生きる希望をなくすであろう。
そんななか、現れたのが光世氏である。病気の綾子氏を受けいれ、結婚してくれた。彼こそが「相手を自立」させうる男性であった。もう、感動の連続で涙が止まらなかった。
とにもかくにも、だらだらと書いてきたが、私の文章力と脳みそじゃ、内容をそのまま書いていくだけになってしまうので、是非とも少しでも興味を持たれたら、一度読んでいただきたい。
あるべき恋愛の姿、愛すること、生きる喜びを本書で知ることができるだろう。
あれ?2013年になってるww
2012-10-27 17:51
nice!(0)
コメント(0)
トラックバック(1)
コメント 0